現役医学生が聞く「産業医」という働き方【前編】
少数派?現役医学生が聞く「産業医」という働き方
多くの医学生は臨床医としての自身の将来像を思い描いているだろう。一方で、産業医という働き方も視野に入れている人は多くないかもしれない。また、産業医に対して「社会医学の授業で名前は聞いた」「なんとなくホワイトそう」「労働時間が少ないらしい」といった、ふんわり・ぼんやりとしたイメージを持つ人が多いように感じる。今回、現役医学生である筆者が実際に産業医(以下、A先生)にインタビューを行い、「産業医というキャリアを考え始めた時期」「就活の難しさ」「産業医のタイムスケジュール」など、医学生が疑問に思いがちな点について話を伺った。臨床医と兼業していない産業医の一例として読んでもらえると幸いである。
この記事を読むとわかること ・産業医というキャリアを考え始めた時期 ・「一社目の壁」、産業医の就活 ・産業医の1日 A先生の場合 ・産業医の苦労 ・産業医のやりがい ・どんな人におすすめか
(前編では、産業医というキャリアを考え始めた時期と、就活の難しさについて紹介する。産業医の1日のスケジュールや苦労、やりがいについては後編で紹介する。)
産業医というキャリアを考え始めた時期
医師の働き方の中でも、多数派ではない産業医。大学を卒業し、初期研修、後期研修…と進んでいく医師がほとんどだが、どのようなきっかけで産業医になろうと思うのか。産業医として働くことを想像もせず、A先生は精神科を志望し研修病院を選んだ。国試に合格し、そのまま初期研修が始まったが、そこでロールモデルとの出会いがあった。
「その先生に産業医の話を聞いて、というのが出会いですね」
「いろんな具体的な道とか、そういう意味合いで、産業医ってどんな職業像なんだろう、みたいなビジョンが見えてきたのは本当に研修一年目の春ですね」
他には、ガイドラインに沿うゆえに柔軟さが足りないと感じることもあったといい、自身の裁量の小ささへの違和感も産業医の道を進むことを後押しした。大学卒業時の志望科は初期研修を経て変わる、という話はよく聞くがA先生の場合はこの二年でそもそも臨床医から産業医に変わったようだ。また、同期に産業医講習会に誘われたのも一つの要因だとA先生は振り返る。そのような周囲の人からの影響もあり、研修医2年目の夏、A先生の就活が始まった。
苦労した就活、産業医「一社目の壁」
では、どの企業で働くのか?インタビューの中で産業医として苦労したことを聞くと真っ先に「就活」という答えが得られたが、これは「産業医として働くこと」の難しさを表している。産業医の就活には、「一社目の壁」を乗り越えなければならない。読んで字の如く、一社目に就職するのが難しいという。企業の出す求人では産業医として働いた経験が求められることが多い。求人情報が表に出ないことも多い。そもそも大学からの紹介などで定員が埋まることもある。そのため、勤務先を見つけるだけでも簡単ではない。情報を得られたとしても当然採用されるとは限らない。さらに、産業医の研修施設を有する企業は限られている。そうした企業への就職希望があったA先生は転職エージェントも活用して十社に書類を出し、採用をもらえたのは一社だった。
ちなみに、ここで採用をもらえなかったとしても、秋・冬まで就活を続ける、精神科や内科などの専攻医を取る(応募できる求人が多くなり、さらに後述の産業医の専門医となるのに役立つ)などいろいろやりようはあるらしい。ただ、10分の1という数字は多くの人の想像より少ないのではないだろうか。
後編では、A先生の1日のタイムスケジュール、産業医の苦労とやりがい、どんな人に向いているかについて紹介する。