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ストーリー

採血からリハビリまで。ファシリティドッグは子どもをどう支える?

採血からリハビリまで。ファシリティドッグの2回目です

ファシリティドッグを知る|第2回・活動場面と研究から見える効果

記事一覧用紹介文:採血への付き添い、リハビリへの参加、家族への支援。具体的な活動と研究結果を通じて、ファシリティドッグの効果と現在わかっている範囲を紹介します。

カテゴリー・タグ:小児医療/痛みと不安/動物介在療法

治療の必要性を説明されても、怖さがすぐになくなるとは限りません。繰り返す採血や処置に、身構えてしまう子どももいます。その場面を少しでも安心して過ごせるよう、ファシリティドッグは専門職と一緒に関わります。

第1回では、日本への導入と活動を支える仕組みを紹介しました。今回は、実際にどんな場面で働き、その効果について研究は何を示しているのかを見ていきます。

採血や検査を受けるとき

国立成育医療研究センターは、ファシリティドッグ「マサ」の介入例として、採血や点滴ルートの確保、抜糸、画像検査や放射線治療への付き添いを挙げています。手術室への移動を共にする活動も紹介されています。[1]

そばにいる犬へ注意を向けたり、触れ合いながら待ったりする時間は、処置への向き合い方を支えるきっかけになります。ただし、これは各病院が認める運用の中で行われる支援です。犬が自由にどの区域にも入れるという意味ではありません。[1][3]

体を動かすきっかけをつくる

リハビリでも犬の力が生かされています。国立成育医療研究センターでは、歩行訓練や作業療法への参加が活動例に含まれます。[1]

米国の育成団体Canine Companionsは、物を拾うなどの訓練された動作を、作業療法・理学療法・言語療法や社会的なやり取りの支援に組み込めると説明しています。犬に関わりたいという気持ちを、専門職がその人に合う課題につなげる取り組みです。実施できる内容は、犬の訓練と担当者の専門領域によって変わります。[2]

療養生活と、家族の時間にも寄り添う

活動は検査の場面だけに限りません。内服や食事の応援、体調がつらいときのベッドでの寄り添いなど、日々の療養生活にも関わります。マサは病院に加え、医療型短期入所施設「もみじの家」でも活動しています。[1]

シャイン・オン!キッズは、きょうだい・家族のケアや、最期を看取る場への同席も活動として挙げています。何かを達成する場面だけでなく、その人と家族が過ごす時間そのものを支える視点が含まれています。[3]

研究① 日本の医療者は、どんな場面を評価した?

2023年にPLOS ONEに掲載された静岡県立こども病院の研究では、常勤職員626人中431人が質問紙に回答し、犬の活動を観察した270人の回答が解析されました。医療者の評価で特に高かったのは、終末期の支援と、検査・処置への子どもの協力を支える役割でした。[4]

ここで測ったのは、活動を見た医療者の評価です。患者本人の症状を直接比較した試験ではなく、思い出し方の偏りや、1施設・2組の犬とハンドラーに限られる点があります。「現場でどんな価値が認識されているか」を示す研究として読むのが適切です。[4]

研究② 穿刺時の痛みを比べると

米国の小児血液・腫瘍外来で行われた比較研究では、5〜17歳の285人が対象になりました。認定チャイルド・ライフ・スペシャリストとファシリティドッグが支援した143人は、専門職のみで支援した142人より、本人が報告した痛みのスコアが統計学的に低い結果でした(p=0.033)。論文は2023年にオンライン公開され、2024年の雑誌に掲載されています。[5]

チャイルド・ライフ・スペシャリストは、子どもの発達に合う説明や遊びなどを通じて、医療体験に伴う心理社会的な負担を支える専門職です。この研究の比較対象も「何もしない」群ではなく、専門職による支援を受けていました。[5][6]

一方、振り分けは犬がいる日の受診かどうかで決まり、無作為化されていません。痛みの差をすべて犬の効果と断定したり、あらゆる処置や年齢に当てはめたりすることはできません。[5]

研究③ 不安の軽減は、どこまで確か?

2025年のJAMA Network Openには、小児救急を受診した80人の無作為化比較試験が報告されています。通常のチャイルド・ライフ支援に約10分の犬との交流を加えた群では、45分後までの本人評価の不安スコアが平均2.7点下がり、対照群の1.5点の低下より大きくなりました(0〜10点尺度、p=0.02)。[6]

ただし、この研究は訪問型のセラピードッグの試験で、常勤のファシリティドッグを直接検証したものではありません。120分後の群間差や、唾液コルチゾールの変化、鎮静・行動調整などに用いる薬剤の使用割合には有意差がなく、時間経過をまとめて扱った別の解析でも群による変化の違いは有意ではありませんでした。[6]

期待できることと、まだ結論が出ていないこと

これらの研究は、犬と専門職による支援が、処置時の痛みや短期的な不安を和らげる可能性を示しています。ただし、研究ごとに犬の役割、対象者、介入時間、測定方法が違います。今回確認した研究から、治癒率や入院期間の改善、鎮静薬を減らせることまで証明されたとは言えません。

私たちが注目したいのは、子ども本人がどう感じたかという視点です。医療者にとって処置が進めやすくなったことと、本人の苦痛が軽くなったことは、分けて確かめる必要があります。犬との交流を望まない子どもも含め、一人ひとりが安心できる方法を考えることが出発点になります。

次回は、海外の病院や施設での活動と、こうした支援を続けていくための条件を紹介します。

参考資料・出典

[1] 国立成育医療研究センター|マサの部屋

[2] Canine Companions|Facility Dogs

[3] シャイン・オン!キッズ|ホスピタル・ファシリティドッグ®︎プログラム

[4] PLOS ONE(2023)|看護師ハンドラーと常勤犬の活動を評価した医療者調査

[5] J Pediatr Hematol Oncol(2024;オンライン公開2023)|穿刺処置時の痛み・不安の比較研究

[6] JAMA Network Open(2025)|小児救急でのセラピードッグ介入の無作為化比較試験