「もうひとつの家」を支えるのは誰? ボランティアと海外の家族支援
病気の子どもと家族を支える家|第3回・支える人たちと海外から学べること
記事一覧用紹介文:清掃、食事づくり、寄付、医療機関との連携。ハウスを続ける日々の仕事と、英国の滞在支援、オーストラリアの復学支援を紹介し、医学生にもできる関わりを考えます。
カテゴリー・タグ:小児医療/ボランティア/海外の家族支援
病院から戻った家族を迎える部屋に、清潔な寝具が用意されている。台所には食器がそろい、誰かが備品を補充している。ドナルド・マクドナルド・ハウスで家族が過ごす時間は、目立たない仕事の積み重ねによって支えられています。
第1回では家の歴史と役割、第2回では付き添う家族の生活を見てきました。最終回は、支える側に目を向けます。日本の運営と参加の入り口を知り、英国とオーストラリアの事例から、家族を支える仕組みの広がりを考えます。
名前で知られる企業と、運営する財団
ハウスの名前から、マクドナルドとの関係を思い浮かべる人も多いでしょう。日本の財団は、同社とは別の組織であり、企業はパートナーとして寄付、募金への協力、ボランティアなどを通じて支えています。活動には、ほかの企業や個人、地域の人たちも関わっています。[1]
利用する家族の費用を軽くしても、施設の運営に必要なお金や手間はなくなりません。建物の維持、日々の消耗品、衛生管理、スタッフによる調整が続きます。誰が費用を引き受け、どんな人が働き、運営状況をどう伝えるのかまで見ると、寄付による支援の仕組みを具体的に捉えられます。
清掃やベッドメイクも、家族を支える仕事
財団の公式案内では、ボランティアの活動として、部屋や共用部分の清掃・消毒、ベッドメイク、備品補充、スタッフと一緒に行うチェックイン対応、ニュースレターの発送などが紹介されています。料理や園芸など、得意なことを生かした活動もあります。専門的な医療行為をしなくても、生活を支える役割は数多くあります。[2]
一方で、活動は個人の善意だけで完結するものではありません。ハウスマネージャーの公開インタビューには、家族への対応に加え、スタッフとボランティアの採用・育成、病院との連携、支援者との関係づくりなどの仕事が挙げられています。人が安心して関われるよう調整する役割も、継続には欠かせません。[3]
支援を届けるときは、相手の必要を確かめる
食事をつくるミールプログラムは、付き添いで買い物や調理に手が回らない家族を支える活動です。ただし、実施は不定期で、内容や参加方法は各ハウスの運用に沿います。参加したいときは、受け入れ状況や衛生面の手順を、活動先に確認するところから始めます。[2]
物品の支援も同様に、必要な品や数量、保管できる量を先に確かめたいものです。何かを贈ったり、家族に声をかけたりする場面では、支える側がしたいことと、相手が望むことが一致するとは限りません。話さずに休める時間も含めて、家族のペースを尊重することが、さりげない支えにつながります。
英国では、病院からの紹介で滞在につなぐ
英国のRonald McDonald House UKは、病院近くの無償の滞在先を案内し、医療機関のスタッフを通じた紹介を受け付けています。必要性と空室状況を踏まえて各ハウスが部屋を調整する仕組みです。宿泊場所の紹介が、病院の医療チームによる家族支援の一部として位置づけられています。[4]
具体例として、サウサンプトンの病院は、併設ハウスに家族用の寝室や共用キッチン、プレイルームなどがあると説明しています。宿泊の必要がない場合や部屋を確保できない場合も、病棟にデイパスを相談し、日中にシャワーや調理、休憩の設備を使う選択肢が示されています。[5]
オーストラリアでは、教室に戻る時間も支える
オーストラリアでは、学習への復帰を支える取り組みもあります。Ronald McDonald House SydneyのLearning Programは、病気やけがで学習から離れていた子どもの復学を支えています。学習の評価、教師などによる個別指導、必要に応じた専門職の支援を組み合わせ、本人の状況に合わせて進めるプログラムです。[6]
公式の説明では、個別指導は最大40時間で、通常は4学期にわたり週1時間ずつ実施されます。家族へのサービスは無償です。また、学校の教員に向けたEDMedという研修もあり、病気やけがから教室に戻る児童生徒を支えるための知識や方法を伝えています。[6]
治療の予定が落ち着いても、授業への不安や学校生活への心配がすぐになくなるとは限りません。この事例からは、病院にいる間だけでなく、その後の暮らしへ支援をつなぐ視点を学べます。なお、対象や利用条件は現地の制度に沿うもので、日本のハウスでも同じサービスを受けられるという意味ではありません。
日本にも、病院の中で休める場所がある
日本では2023年12月、榊原記念病院に国内初のドナルド・マクドナルド・ファミリールームが開設されました。家族が病院の中で休憩や食事などに利用する空間です。病院の近くに宿泊するハウスに加え、付き添いの合間に短い時間を過ごせる場所を用意する取り組みもあります。[1][7]
海外の事例を日本で考える際には、施設の数だけを比べるよりも、誰が利用を案内するのか、病室から離れる間は誰が子どもを支えるのか、退院後までつながるかを見たいところです。立派な建物があっても、必要な家族に情報が届き、実際に利用できる仕組みがあって初めて支援になります。
医学生も、暮らしを支える側に参加できる
日本のハウスのボランティアは、公式案内では高校生以上が対象です。医学生も、まず近隣のハウスの募集状況や活動条件を調べることから始められます。参加できる時間や内容を正直に伝え、受け入れ側と相談して続けられる関わり方を選ぶことが大切です。[2]
参加した先は、家族が生活している場所です。病状を詳しく聞き出したり、学習のために体験を語ってもらったりすることを目的にせず、任された仕事を丁寧に行う。そこで知った個人の情報を持ち出さない。医療を学ぶ立場だからこそ、暮らしの場に入る際の距離感も意識したいと思います。
3回を通じて見えてきたのは、子どもの治療を支えるために、家族の寝床、食事、仕事、きょうだいとの時間も考える必要があるということです。病院の近くで続く暮らしに関心を持ち、地域の支援先を一つ知る。その小さな行動が、将来、家族と相談するときの選択肢を増やしてくれるはずです。
参考資料・出典
[1] 財団公式|財団について・マクドナルドとの関係
[2] 財団公式|ボランティアに参加する
[3] 財団公式|せたがやハウスのマネージャーインタビュー(20周年企画)
[4] Ronald McDonald House UK|Advice for Healthcare Professionals
[5] University Hospital Southampton|Ronald McDonald House
[6] Ronald McDonald House Sydney|Education Services
[7] 財団公式|ドナルド・マクドナルド・ファミリールームについて