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学習

現役医学生が聞く「産業医」という働き方【後編】

「産業医」の魅力と苦労

前編では、A先生が産業医というキャリアを考え始めた時期と、産業医の就活の難しさ「一社目の壁」について紹介した。後編では、A先生の1日のタイムスケジュール、産業医の苦労とやりがい、どんな人に向いているかについて紹介する。

産業医の1日 A先生の場合

ここで、A先生の1日のタイムスケジュールを紹介する。

0:00 ───── 睡眠 ───── 6:30

7:40 出社|8:00 始業 ───── 勤務 ───── 16:45 終業|17:30 帰宅

17:30 ───── 夕食・入浴など自由時間 ───── 24:00

業務内容としては、主に 午前:特殊健診、健康診断の要診察の社員の面談 午後:打ち合わせ・ミーティング参加、工場で特殊健診 となる。そして月一で職場巡視があるといった感じだ。ちなみに、残業の有無は企業にもよるが、A先生の企業では残業が基本的にないそうだ。どうだろうか。残業しないということもそうだが、17時前に終業というのもかなり新鮮ではないだろうか。こうして見ると、失礼ながら楽そうに感じてしまうかもしれない。実際にたまに耳にする、産業医が「時間的余裕があり、楽な仕事」であるというイメージは、こうした「良い部分」がより強調されて切り抜かれがちだからかもしれない。もちろん、産業医には産業医の難しさがあった。

「楽そう」なだけではない、産業医の苦労

産業医の業務は、労働安全衛生法に基づき、仕事に支障のない体調を維持できるように社員の健康管理をサポートすることである。業務内容としては、工場巡視など労働環境の監査や特殊健診のほかに健康診断結果を受け要面談となった社員との面談もある。臨床医が診る患者さんの多くは、「治してもらいたい」「診察してほしい」という動機を持って受診することが多いと思う。一方で産業医として面談する社員は、「健診で引っかかったから仕方なく来た」人が多く、臨床医と比べ、フレキシブルな対応を求められることがより多いそうだ。「いわゆる受診する動機がない。タスクとして来なきゃいけないから来ている。なんか呼ばれたから来ましたみたいな」

そして、産業医は会社員であるため病院内における医師ほどの自由さがない、というのも臨床医との違いだろう。企業の中でやっていけるかどうか、というのも産業医になるにあたって重要な要素だ。

また産業医にも専門医資格があり(産業医衛生専門医)、臨床の専攻医と同じく専門医試験に向けて勉強せねばならない。大学で勉強する公衆衛生分野についてもっと掘り下げて勉強することになる。そのため、そうした分野にそもそも興味がないと、産業医として働き続けるのは難しいかもしれない。

「産業を支える」臨床医とは毛色が違う産業医のやりがい

臨床医は、患者さんを診察し「治している」という実感を得られるはずだ。直接的に感謝を伝えられることも少なくはないだろう。一方で産業医は、先述の通り仕方なく面談しに来る社員が多く、また医療行為を行うことも少ない。こうした中で、どのようにやりがいを得るのか。

「工場の夜景に感動できる人は、産業医に向いていると思う」

産業医として職場巡視していると、従業員を支えている感覚が得られるそうだ。また、工場の夜景を見て、産業が止まることなく動き続けていることを感じ、自身がその産業を支えていると感じる時があるそうだ。「工場巡視に面白さを感じられる人は、産業医に向いている」

また、QOLの高さもやりがいにつながっているとA先生は分析していた。仕事にどれだけの時間を割くことができるかどうかは人それぞれである。もちろん、体力的な面もあるだろう。生活の中に余白が欲しいと考えていたA先生にとって、そうした仕事に就けて働いていることそのものが、やりがいの獲得につながっているようだ。

どんな人におすすめか

ここまで色々話を聞いて、どんな人が産業医に向いていると思うかを聞いた。すでに出ている、企業の中でやっていける/工場巡視に面白さを感じられる/フレキシブルな対応力のほかに、「自分が主役でなくても良い人」が向いているそうだ。産業医は意見書を出すものの、あくまで最終決定は従業員と雇用関係を結んでいる会社が行うため、その点で決定権が少ないと言える。また、保健師が権限を持って担当している業務も多い。つまりは、会社の安全衛生担当や人事スタッフ、保健師といった多種多様な産業保健スタッフ、さらには従業員本人やその上司とも協調する場面が多い、というのが産業医の特徴と言えるだろう。一方で臨床医は、基本的に自身の方針に最終的な決定権を持つことができる。そういった違いが人によっては負担になるかもしれない。そして、「臨床にこだわりがない」というのも、向いている一つの要素だそうだ。たしかに、医学部を卒業すると大多数が臨床医として働く。臨床医以外の働き方を選んだ人は、自身の働き方と臨床医として働く場合を比較することが多いのかもしれない。診断と治療ありきの臨床医とは違い、産業医は「従業員の病気を予防し、健康を支え、さらには働くという幸せを支える」という視点の仕事である。そういった意味でも臨床に強いこだわりがない人は、産業医に向いていると言えるだろう。

おわりに

いかがだっただろうか。この記事を読んでいる人は、少しは産業医という職業について興味を持っている人なのだと思う。そういった人たちのモヤモヤを少しでもスッキリさせられたら嬉しい。なお、今回は産業医の業務内容や専門医制度には多く触れなかった。詳しく知りたい人は、厚生労働省や日本産業衛生学会のホームページを見てもらえればと思う。最後に、インタビューに応じてくださったA先生にこの場を借りて改めて感謝申し上げる。