コンテンツの詳細
学習

病院で働く犬を知っていますか? ファシリティドッグと日本での歩み

病院で子どもたちを支えるファシリティドッグ。その役割、日本への導入の経緯、育成のしくみと国内の導入施設を紹介します。

病院の廊下を、看護師と一緒に歩く犬。子どものベッドのそばで静かに寄り添い、ときには検査に向かう道のりも共にします。そんな「病院で働く犬」を知っていますか。

ファシリティドッグは、特定の施設で人を支えるために専門的な育成を受けた犬です。この連載では、病院で活動する犬に焦点を当て、どのように医療に関わり、何をもたらすのかを3回にわたって考えます。[1]

同じ病院で、子どもと関係を築く

日本で導入を進める認定NPO法人シャイン・オン!キッズでは、臨床経験のある看護師などが「ハンドラー」として犬とペアを組み、医療チームと連携します。同法人はこの仕組みを「ホスピタル・ファシリティドッグ®︎プログラム」と呼んでいます。[1]

特徴は、同じ病院で継続して活動できることです。一度のふれあいで終わらず、その子の治療や療養生活に合わせて関わりを重ねます。病院側も、今日はどんな支援が必要かを共有しながら活動を組み立てられます。[5]

「セラピードッグ」との区別は国や団体によって表現が異なりますが、育成方法、ハンドラーの専門性、活動の継続性や目的に注目すると理解しやすくなります。米国のChildren’s Hospital Coloradoも、臨床スタッフと治療上の目標を支えるmedical dogsと、ボランティアとして訪問する犬のプログラムを分けています。どちらにも役割があり、単純な優劣ではありません。[2]

出発点にあった、子どもと家族への思い

シャイン・オン!キッズの前身は、2006年に設立されたタイラー基金です。小児がんで幼い息子タイラーを亡くした両親が、自分たちの経験をほかの子どもや家族の支えにつなげたいと立ち上げました。団体はその後、病気と向き合う子どもと家族への心理社会的支援を広げていきます。[3]

病気を治療する過程では、不安や孤独、家族と離れて過ごす時間にも目を向ける必要があります。ファシリティドッグの取り組みも、そうした療養生活を支える活動の一つとして位置づけられています。[3]

2010年、ベイリーが日本のこども病院へ

同法人の年表では、日本への導入プロジェクトは2008年に始まり、2010年にベイリーが静岡県立こども病院で勤務を開始しました。2012年には神奈川県立こども医療センターへ移り、静岡ではヨギが活動を引き継ぎました。[1]

初期には、米国の育成団体Assistance Dogs of Hawaiiと連携し、専門的な訓練を受けた犬を迎えていました。犬だけを送り出すのではなく、人の側も現地で研修を受け、日本の病院での活動につなげてきた経緯があります。[4]

東京都立小児総合医療センターでは2019年に導入されました。同院は、心のケアやチーム医療の取り組みとして、感染予防・医療安全のマニュアルに沿って活動を運営しています。[11]

犬と人の両方を育てる

継続には、引退する犬の後任を育てる仕組みも欠かせません。シャイン・オン!キッズは2019年に国内育成を開始しました。紹介されている育成課程では、犬の個性に合わせて18か月〜2年ほどをかけ、行動の練習や多様な環境への社会化、適性評価を行います。これは犬の育成期間の説明であり、病院への導入準備全体の所要時間とは同じではありません。[4]

穏やかな性格に加え、病院特有の音や人の動きの中でも安心して過ごせることが求められます。ハンドラーも患者の状態と犬の様子の両方を見ながら活動するため、ペアとしての学びが重要になります。[1][4]

日本では、どこで活動している?

公式資料から確認できる主な導入施設をまとめました。初回導入年と、増員・試行の状況を分けています。これはシャイン・オン!キッズのプログラムの紹介であり、国内すべての動物介在活動を数えた一覧ではありません。

施設

初回導入・近年の動き

静岡県立こども病院

2010年に導入。ベイリー、ヨギを経て、2021年からタイが活動。[1]

神奈川県立こども医療センター

2012年に導入。2025年11月、アニーからオリへ業務を引き継ぎ。[1][10]

東京都立小児総合医療センター

2019年に導入。2026年4月から2チーム目を導入し、試行期間へ。[7][11]

国立成育医療研究センター

2021年に導入。2026年6月から2チーム目のマナを迎え、6か月の試行を計画。[1][8]

兵庫県立こども病院

2026年4月からミコが試行的に活動。病院発表では同年秋頃の本格活動を計画。[6]

さらに2026年8月の同法人の発信では、トミー・ミコ・マナがその年に活動を開始したと紹介されています。ただし、活動開始と試行期間の終了は同じではありません。古い記事の頭数をそのまま現在の総数として扱わず、各施設の発表時点を確認することが大切です。[9]

医療の中に、安心できる関係をつくる

ここまでの歩みから見えてくるのは、犬の存在を生かすために、人の専門性と病院の仕組みが積み重ねられてきたということです。ファシリティドッグを知ることは、患者が何に不安を感じ、どんな支えがあれば治療に向き合えるのかを考える入口にもなります。

次回は、採血、リハビリ、緩和ケアなどの具体的な場面と、効果を調べた研究を見ていきます。

参考資料・出典

[1] シャイン・オン!キッズ|ホスピタル・ファシリティドッグ®︎プログラム

[2] Children’s Hospital Colorado|Medical Dog Program

[3] シャイン・オン!キッズ|ミッションとこれまでの歩み

[4] シャイン・オン!キッズ|ファシリティドッグ育成事業

[5] 国立成育医療研究センター|マサの部屋

[6] 兵庫県立こども病院|ファシリティドッグいよいよ始動(2026年)

[7] シャイン・オン!キッズ発表|国立成育医療研究センターが2頭目を導入(2026年)

[8] シャイン・オン!キッズ|「マナ」の導入先が成育医療研究センター2チーム目に内定(2026年)

[9] シャイン・オン!キッズ|新しい候補犬として、2頭の仔犬が仲間になりました(2026年)

[10] シャイン・オン!キッズ発表|アニーの引退とオリへの引き継ぎ(2026年)

[11] 東京都立小児総合医療センター|シャイン・オン!キッズとの連携について